新幹線のシンボル!静電アンテナとは!?

鉄道の仕組み

 「新幹線の顔を思い浮かべて下さい!」と言われたら、あなたはどの新幹線を思い浮かべるでしょうか?世代や住んでいる地域によって様々だと思いますが、40歳代以上の方々は新幹線といえばいまだに「0系」の丸い団子鼻を思い浮かべるという方も少なくないのではないでしょうか。0系といえば、言わずもがな初代新幹線ですが、団子鼻と同じくらい印象的なのが、頭についている平行四辺形に棒を付けたような装置です。これは「静電アンテナ」といい、初代0系から現在の最新型車両N700S系にも装備されている、新幹線にとって非常に重要な部品です。今回のテーマは、この「静電アンテナ」についてです。

静電アンテナとは?

 この静電アンテナ、なんかスピード感があってカッコ良いですよね!新幹線のシンボルの一つなのですが、当然カッコつけるために付けられているわけではありません。重要な役割が2つあるのです。

電車線(架線)電圧検知

 架線に電気が流れているかどうかを、交流「誘起電圧」を利用して検知しています。誘起電圧とは電磁誘導により発生する電圧で、直接架線に触れていなくても検知することができます。そのため、パンタグラフを降ろしている状態でも、架線に電気が流れているかどうかを確認する事が可能です。

 誘起電圧により、アンテナ内部の回路に交流が流れます。その交流を直流に変換し、一定の電圧に達すると架線に電気が流れていることを検知する仕組みです。

 運転士は車両の不具合が発生した場合、パンタグラフを降ろした状態で屋根上に上がり、点検作業を行う事があります。この時、架線に電気が流れたままの状態だと感電する可能性があり、大変危険です。そのため、確実に停電した事を確かめる必要があるのですが、その時に役立つのがこの静電アンテナの電圧検知機能です。「パンタグラフを降ろした状態でも確認できる」というのが重要です!

 ちなみに直流電化区間では誘起電圧は発生しません。そのため静電アンテナのような検知装置は装備されておらず、パンタグラフを下げてしまうと、電気が流れているかいないかはわかりません。交流電車ならではの装備です。

構内無線用アンテナ

 駅や車両所構内において、列車と信号扱所との間の無線通信に使用します。

静電アンテナの問題点

 静電アンテナは、車体から出っ張っているため、走行時は「騒音源」の一つとなります。新幹線は300km/hという高速で運転されます。そのため、車体はなるべく平滑化し、騒音源となる凹凸を排除する必要があるのですが、全ての出っ張りをなくすことはできません。架線から電気を取り入れるパンタグラフはその代表例です。静電アンテナもパンタグラフも、新幹線にとって必要不可欠な装置である反面、騒音の原因ともなっているのです。

場所は変われど形は変わらず…

パンタグラフの進化

 パンタグラフは騒音低減のため、数そのものを減らしたり、形を変えたり、またパンタグラフカバーを取り付けたりと、新型車両が登場するたびに進化をとげてきました。

形が変わらない静電アンテナ

 一方、静電アンテナはというと、パンタグラフとは対照的に長らく全く形を変えずに採用されてきました。特に初代0系から1992年登場の300系までは、取り付けられる位置も、アンテナそのものの形も全く変わっていません。

初めて場所が変わった500系

 初めて変化があったのは、1997年に登場した500系。最高速度300km/hでの営業運転を日本で初めて開始した新幹線です。この500系は登場当時、静電アンテナをパンタグラフカバーの中に収めていたため、外観からはその姿を見ることができませんでした。現在はパンタグラフカバーの形状が変更され、そのタイミングで2号車と7号車の先頭車両寄りに露出する形で移設されています。

700系以降の形式

 700系以降の車両では、取り付け位置が先頭車両の運転席真上から後ろ側に移動しています。以前のような存在感はなくなりましたが、それでも実に半世紀以上、全く形を変えずに採用されてきたのです。

急に進化!?N700S系

 形に変化があったのは、2020年に登場したN700S系です。これまでずっと平行四辺形に棒を繋げたようなデザインでしたが、N700S系では角がとれて全体的に丸みのあるデザインに進化しました。従来型と比べて騒音が低減されているそうです。長年の伝統的な形を打ち破った研究者の方々の成果、凄いですね!

静電アンテナまとめ

 以上が、新幹線に装備されているシンボル的な存在「静電アンテナ」のお話でした。

役割

  • 架線に電気が流れているかを検知
  • 列車と信号扱所との間の無線通信

問題点

なくてはならない装置である一方、騒音の発生源にもなる。

設置場所と形

形式により設置される場所に違いはあるものの、0系から形が全く変わっていなかった。

N700S系

半世紀以上続いたデザインが変更された。従来型のアンテナより丸みを帯びた形に進化し、騒音が軽減されている。

 

 静電アンテナは誘起電圧を利用していると述べました。実際に実物を見てみると、架線とアンテナは結構離れているように見えます。交流25,000Vのパワーは凄まじいですね。

 今度、新幹線を利用する機会があれば、屋根上についているアンテナを探してみて下さい。形式により、設置場所や形の違いに気がつくと思います。今回の記事を参考に、是非楽しんでみて下さい。

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