今回のテーマは「列車の発車時刻」についてです。時間通りに駅に来たのに列車に乗り遅れた!こんな経験、みなさんは持っていませんか?知っているようで意外に知らない、列車の発車時刻についてご紹介します。
時刻に正確であるが故の失敗
日本の鉄道は世界一時間に正確であると言われています。海外では時刻通りに来ないのが当たり前。何時間も遅れたり、なかには何の予告もなく何時間も早く出てしまう事もあるそうで…。そう考えると日本の列車は凄いですね。そんな時間に世界一正確な日本の鉄道ですが、正確であるがゆえにこんな失敗をした事はあなたはないでしょうか?
9:30に発車する列車に乗ろうと駅に来ました。改札を抜けてホームに上がり、9:30ぴったり。間に合ったと安堵して列車に目を向けたらびっくり!なんともう、ドアが閉まっているではありませんか!時刻通りに来たのに何で乗れないんだ!?
このような失敗をした方、結構いらっしゃるのではないでしょうか?そういう私自身も、同じような事でこれまで100万回くらい目的の列車に乗りそびれております。
発車時刻はドアが閉まる時刻ではない
なぜ、このような事が起こるのか。9:30発の列車に乗るために9:30ちょうどにホームに着いたのに乗れなかったという事は、時刻より早く発車したという事でしょうか?いえいえ、日本では早発、すなわち決められた時刻より早く発車する事は「鉄道営業法」という法律の「鉄道運輸規程」の第22条で禁止されている違法行為、早発はありえません。実は、列車の発車時刻に関してある勘違いをしていた事が原因でこのような事態に陥ってしまったのです。
それは、発車時刻とは「列車のドアが閉まり始める時刻ではない」という事です。では、時刻表に記載されているあの時刻は何の時刻なのかと言いますと「列車が進行を開始する時刻」なのです。つまり、
- 発車ベルや放送が流れる。
- 車掌がドアを閉める。
- 車掌がドアやホームの安全確認を行う。
- 車掌が運転士に発車してもよいと合図する(事業者により無い場合もあり)。
- 運転士がブレーキを緩解する。
- 運転士がノッチを投入する。
- 列車が動き始める。
この「7番」の動き出すタイミングこそが列車の発車時刻なのです。
先ほどの例ですと、発車時刻ぴったりにホームに着きましたが、動き出すタイミングにホームに着いたので、当然乗る事はできません。実際には10秒ほど前にドアは閉まり始めています。このように、列車の発車時刻にはちょっとした注意が必要なのです。
さらにはホームドア付きの駅の場合は、かなり早く閉めないと定刻で列車は発車できませんので注意する必要があります。ギリギリの駆け込み乗車は危険なだけでなく、列車運行の妨げにもなり、他の利用者にも迷惑になります。列車を利用する時は、余裕を持って駅に行きましょう。
わずかな遅れが大きな遅れに…!
日本の列車ダイヤは秒単位で運行されており、ちょっとした遅れが大きな遅れに発展する事があります。例えば、3分間隔で運転している高密度線区の場合、駆け込み乗車を理由に各駅10秒だけ遅れてしまったとします。すると、6駅で1分、12駅で2分となり、18駅目では3分遅れで、列車が1本消滅したのと同じ事になります。都市部ですと、1列車に2,000人以上乗りますから、それはそれは大変な混雑です。実際には、後半の駅では混雑も重なって一駅10秒の遅れではすまなくなってくるでしょう。わずか10秒ではありますが、数人のちょっとした駆け込み乗車の遅れが、雪だるまのように膨れ、大きな混雑と遅れを発生させてしまうこともあるのです。
秒単位で管理されている運転時刻
新幹線と在来線と時刻管理
ところで列車の運転時刻は厳密に決められていて、鉄道事業者にもよりますが、在来線の場合は5秒間隔、新幹線の場合は15秒間隔で管理されています。そのため、例えば在来線の時刻表に「9:30発」と記載があったとしても、9時30分ちょうど発なのか、9時30分55秒発なのかは利用者にはわかりません。9:30ちょうどに発車すると思って列車に乗り、発車後に時計を見たら9:31になるところだった、1分遅れているじゃん!と思ったとしても、その列車の発車時刻が9時30分55秒と定められていた場合は定刻発車となるのです。利用する側としては、ちょうどに発車する心づもりで早めに乗車した方が確実ですね。
通過列車の時刻管理
なお、これは停車駅だけに限った事ではありません。快速列車や特急列車は通過駅が存在しますが、この通過時刻も同様、秒単位で厳密に決められています。お客さんがいないからといって早く通過し過ぎたり、遅く通過してもいけません。これは、線路で作業をしている係員を守るためです。線路の作業係員は、列車ダイヤを参考に作業計画を立てて実施しています。そのため、例えば通過が早過ぎた場合、係員の退避が遅れ、事故につながる可能性があるのです。実際には、列車が通過する時刻よりも余裕を持って早めに退避したり、見張り専用の係員を配置したり、GPSを使用したりして列車の接近に備えている為、通過時刻が少しずれるくらいでは、直ちに事故に繋がる事はないかもしれませんが、運転士が時刻を守ることが重要なのは変わりません。
皆の協力によって成り立つ定時運行
日本の鉄道は時間に正確でとても便利です。しかし、だからこそ使う側にも、その正確な運行を妨げないように利用するマナーがあります。定時運行は、鉄道事業者と利用者の協力によって成り立っているのです。これからも、日本の列車が時間通りに走り続けるために、使う私たちも時間にゆとりを持って利用したいものですね。
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