2024年6月13日(木)、JR東海とJR西日本はそれぞれ一編成ずつ所有している新幹線電気軌道総合試験車、通称「ドクターイエロー」の引退時期を発表しました。JR東海所属のT4編成は2025年1月、JR西日本所属のT5編成は2027年を目処に引退するとの事です。今回のテーマは引退が決まった「ドクターイエロー」です。
新幹線は短命!?
新幹線車両は過酷な条件の中で使用される為、在来線車両の耐用年数が30〜50年と言われているのに対し、新幹線車両はわずか15年ほどで廃車されてしまいます。どおりで、先日デビューしたばかりだと思っていたら、廃車になっているわけですね。ドクターイエローはJR東海所属のT4編成が製造から20年を超えており引退がささやかれていましたが、ついに公式発表となってしまいました。
ドクターイエローの後継車は?
今回、後継となる車両の製造計画はありません。今後の検測作業は営業列車に搭載されている検測用の機器を使用して実施されるとの事です。後継車としてN700S系の黄色い新幹線ができたら面白いのになぁ…と思いましたが、時代は変わり、新幹線における検測専用の車両は過去のものとなりつつあります。
営業列車のみで検測している新幹線
他の地域に目を向けてみますと、九州新幹線や西九州新幹線では検測専用車両は存在しません。営業列車に搭載された検測用機器で実施されています。効率から考えれば、営業列車で点検した方が高頻度で行うことができますし、わざわざ検測車を走行させるための計画を立てる必要もありません。
JR東日本の「East i」
現在、新幹線用の電気軌道総合試験車として活躍しているのは、東海道・山陽新幹線の923形ドクターイエロー2編成と、JR東日本が所有しているE926形、通称「East i」の1編成の計3編成です。JR東日本においても、営業列車に検測用の機器が搭載されている編成があるとの事です。East iも製造年はドクターイエローT4編成と同じ2001年です。いずれは後継車両なしで引退する日がやって来るかもしれません。
なかなか会えないドクターイエロー
ドクターイエローは「見ると幸せになれる」なんて言われ、一種の縁起物のように扱われる事があります。概ね10日に一度、東京〜博多駅間を往復していると言われていますが、その運転日や時刻などは非公開です。普段、仕事がら新幹線をよく使用するのですが、ドクターイエローにたまたま遭遇すると心が高揚したものです。東海道新幹線では、白い車体に青のラインの車両しか走っていませんから、黄色い新幹線が現れると物凄く異彩を放ちます。人気が出るのも当然かもしれませんね。
過去に活躍した先輩車両たち
現在、ドクターイエローはT4編成とT5編成が活躍していますが、過去にはT1、T2、T3編成も活躍していました。すでに現役を退いています。
T1編成
東海道新幹線開業時から活躍した電気試験車です。新造されたわけではなく、東海道新幹線の試作車「1000形B編成」を改造したもので、時速200km/hでの検測が可能でした。「電気試験車」とあるように電力や通信などの検測に用いられ、この時はまだ軌道検測車は組み込まれていません。軌道検測車はディーゼルカーに牽引される別の車両が担当し、こちらは最高速度160km/hで検測していました。
T2編成
1974年に二代目ドクターイエローとして登場しました。翌年の1975年には山陽新幹線が博多駅まで開業しています。別々だった軌道検測車を編成内に組み込み、電気試験車から「電気軌道総合試験車」となりました。1987年の国鉄分割民営化後はJR東海の所属となっています。
T3編成
T2編成が検査に入った時のピンチヒッターとして登場しました。検査設備が更新され、架線摩耗測定装置にレーザー光線方式が採用されています。外見上は、黄色の車体に鼻が白く、窓が大きいのがT2編成、鼻が黄色く小窓のものがT3編成です。分割民営化後はJR西日本の所属となりました。
今年で開業60周年を迎える東海道新幹線。開業時から安全を守り続けてきた、長い歴史を持つ黄色い新幹線はまもなく見納めの時を迎えます。 JR西日本所属のT5編成が引退するのが2027年との事なので、見られるのも長くてあと3年。その仕事を後輩達に全て譲るその日まで、元気で頑張ってほしいですね!
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