目を見ればわかる!?時代により進化してきた列車のヘッドライト

鉄道雑学

 自動車で使用するヘッドライトは、電球のハロゲンランプ、HID、そして最近はLEDのものが普及してきましたね。鉄道も流れは同様で旧型車両はシールドビームと呼ばれる白熱電球を使用したライトに始まり、最近はHID、そしてLEDと進化してきています。

 今回はそんな列車の目ともいうべき「ヘッドライト」がテーマです。

そもそも列車のヘッドライトは何のためにあるのか?

 意外と思われるかもしれませんが、列車のヘッドライトは自動車のように、前方を照らして視界を確保する事を第一の目的で取り付けられているわけではありません。では、なぜあるのかというと列車の進行方向を周りに知らせる「標識灯」としての役割を持たせているからです。

 線路上には列車を運行している時間帯でも、保守管理する係員が作業をしている事があります。実際には列車が見えた後では遅いので事前に退避しているのですが、そういった線路上の係員に列車が進来してくるのを知らせる事が、このヘッドライトの役割の一つです。そのため、ヘッドライトの事を鉄道車両においては「前部標識」、テールライトを「後部標識」、合わせて「列車標識」といいます。立派な鉄道標識の一つなんですね。

実は点けなくてもよい!?省令と鉄道事業者の取り扱い

鉄道に関する技術上の基準を定める省令

 ヘッドライトは立派な「標識」であると紹介したばかりですが、実は必ずしも常に点灯させなければならないというわけではありません。「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」の車両の附属装置第81条の七によると、標識灯とは「夜間に列車の前方及び後方からその列車の進行方向を確認することができるものであること」とだけあります。つまり「日が出ている昼の間は列車標識を表示しなくても良いですよ」ということです。

鉄道事業者の実際の取扱い

 では実際のところ、鉄道事業者はどのように列車標識を取り扱っているかというと、たいていは昼も夜も夜間の方式、すなわち列車標識を表示した状態で走行していると思います。それは、地下区間やトンネル内、または天候状態の悪い場合においては、夜間の方式で取り扱わなければならないからです。この時は点けて、この時は消して…なんてしていたら、運転士の業務が煩雑になりますね。夜間方式で統一しておいた方が楽ですし、昼間といえど視認性は表示した方が有利であるのは言うまでもありません。

ヘッドライトの進化!目を見れば製造時期がわかる?

 列車の前部標識灯はシールドビーム(白熱電球)から始まり、HID、そして現在の新型車両はLEDが用いられています。シールドビームは旧国鉄時代から2000年代前半までの非常に長い期間採用されて続けていたので、それを見ただけではいつ頃デビューした列車かはわかりません。一方、HIDやLEDが採用されていれば、概ねいつ頃の車両か判別がつきます。

 現在、現役の山陽新幹線の車両とJR西日本の在来線車両を例に、デビュー年と採用されている前部標識灯をご紹介します。

山陽新幹線車両

  • 500系:1997年(シールドビーム)
  • 700系:1999年(シールドビーム)
  • N700系:2007年(HID)
  • N700S系:2020年(LED)

JR西日本 在来線車両

  • 115系:1963年(シールドビーム)
  • 223系2000番台:1999年(シールドビーム)
  • 225系0番台:2010年(HID)
  • 227系0番台(RedWing):2015年(HID)
  • 323系:2016年(LED)
  • 227系500番台(Urara):2023年(LED)

 在来線車種は適当に選びましたが、ざっとこんな感じです。2000年代の後半からシールドビームからHIDが主流となり、2010年代後半からLEDにバトンタッチしたというところでしょうか。

 今度、列車に乗る時は前部標識灯を是非確認してみて下さい。「HIDかぁ、2010年前後にデビューした車種だな」みたいな見方ができて面白いかもしれません。目を見ればデビュー年がわかる…まではいきませんが、同じ形式・同じ顔をしていても違っていたりするので、「初期車だな」とか「二次車かな?」といったように、新旧を見分けられるようになります。

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