九州特集、第3回目となる今回のテーマは「博多駅の会社境界線」です。博多駅は、新幹線部分はJR西日本、在来線部分はJR九州、地下鉄部分は福岡市交通局がそれぞれ管轄しており、同じ博多駅であるにもかかわらず、管理会社が3社もある駅です。しかも、地上部分においてはその境界線が駅を真っ二つに割っており、雰囲気が急に変わるという特徴的な作りになっているのです。今回はそんな博多駅を「会社の境界線」という視点から詳しく見ていこうと思います!
実は珍しくない?違う会社の同じ駅
博多駅はJR西日本とJR九州、そして福岡市交通局の管轄ですが、同じ駅を複数の鉄道事業者が運営する例は、全国見渡すと都市部を中心によく見受けられます。
都市部で見られる駅の例
日本で一番乗り入れる鉄道事業者が多い駅である横浜駅は、JR東日本を始め、東急、京急、相鉄、市営地下鉄、横浜高速の実に6社が、同じ「横浜駅」を名乗っています。家電量販店「ビックカメラ」の歌にもなってますね。横浜駅に限らず、都市部の駅は複数の鉄道事業者が乗り入れていることが多いので、こういった地域にお住まいの方は、同じ駅名の駅を複数の鉄道事業者が運営する例は、比較的イメージがしやすいのではないでしょうか。
新幹線駅の例
東海道・山陽新幹線の駅でいえば、東京〜熱海駅間の各駅は新幹線部分がJR東海、在来線部分がJR東日本の管轄。米原〜新大阪駅間の各駅は新幹線部分がJR東海、在来線部分がJR西日本の管轄。そして、小倉駅と博多駅は新幹線部分がJR西日本、在来線部分がJR九州の管轄です。新幹線と在来線で管轄している駅が異なること自体は、それほど珍しいことではありません。
雰囲気が急に変わる博多駅
博多駅は東側が福岡空港方面の「筑紫口」、西側が街の繁華街である天神方面の「博多口」の計2ヶ所の出入り口があります。筑紫口は新幹線の改札口が近く、博多口は在来線の改札口が近い出入り口です。
さて、では博多駅の何が特徴的であるかというと、この両出口を繋いでいる東西の通路が、会社境界線を境に雰囲気がガラッと変わることにあります。
では、JR西日本側である筑紫口から、JR九州側の博多口に向かって、歩いてみましょう!
JR西日本 筑紫口側
JR西日本は、東の「筑紫口側」を管轄しています。駅の正面玄関はシンプルな構造をしていて、派手さがある博多口と比較すると、こちらは裏口的な存在かもしれません。
中に入ると全体的に「濃いグレー」の落ち着いた雰囲気のコンコースで、みどりの窓口や新幹線改札口周りは、コーポレートカラーである「青色」が随所に使用されています。新幹線のピクトグラムも700系レールスターがモデルとなっていて「こちら側はJR西日本の駅ですよ!」と、強調しているように感じます。
会社境界線
JR西日本の改札口付近から、博多口方面に歩いていくと、いよいよ今回のメインテーマ「会社境界線」が見えてきます。これが、この境目なのですが、いかがでしょうか?雰囲気がガラッと変わっているのがお分かりいただけるのではないでしょうか。急に真っ二つに割れたように変化するので、注意して見ていなくても、そして遠くからでも境目は十分に見つけられます。
境界上には、画像のような両社のJRマークとともに「境界」と記載されたプレートが埋め込まれています。
JR九州 博多口側
この境界を境に博多口側はJR九州の管轄となります。さきほどの落ち着いた濃いグレーから一転、こちらは白を基調としたカジュアルな明るい雰囲気の通路になっています。案内標記に駅事務室の記載がありますが「JR九州博多駅事務室」になっていますね。こちら側がJR九州管轄であることが明記されています。
みどりの窓口は、白地に緑帯のオーソドックスなスタイルですが、JRがコーポレートカラーの「赤色」であるのと、新幹線のピクトグラムがN700S系になっています。
このまま進むと西側の出入り口「博多口」です。こちらは商業施設が入った複合ビルになっていて、とても賑やかです。正面玄関のシンボルである大きな時計やアーチ型の大屋根など、趣向を凝らしたデザインとなっており、まさに九州最大のターミナルに相応しい佇まいです。筑紫口と比較すると、こちらが正面玄関といえそうです。
注意点
会社境界線を境に雰囲気がガラッと変わりますよ、という話をしてきましたが、実は鉄道事業者が変わることにより、注意しなければならない点が2つあります。ここからは、境界線の話というよりは、2つの鉄道事業者により運営されているがゆえの話となります。実際に以下の場面にあたった時は、どちらの事業者側に行かなければならないのか、よく調べた上で行動しましょう。
インターネット予約のきっぷ発行
JR西日本のネット予約サービス「e5489」で予約したきっぷを、JR九州の券売機で受け取る場合、またはJR九州のネット予約サービスで予約したきっぷを、JR西日本の券売機で受け取る場合は、通常のきっぷであれば問題ありませんが、一部の割引きっぷは受け取りができないものがあり、発券の際は注意が必要です。そのため、特に割引きっぷなどを予約した場合は、予約した鉄道事業者の券売機を利用した方が無難といえます。
忘れ物の問合せ
忘れ物をした場合、新幹線なのか在来線なのかで、問い合わせる場所が全く異なります。
在来線
在来線で忘れ物をした場合は、在来線の管轄がJR九州なので、JR九州の忘れ物預かり所に向かう必要があります。JR九州の忘れ物預かり所は、1階のみどりの窓口の中に設置されています。
新幹線
新幹線で忘れ物をした場合は、新幹線の管轄がJR西日本なので、JR西日本の忘れ物センターへ向かいます。2階のひかり広場改札口から、飲食店やコインロッカーが設置してある方向に少し進んだ、通路の途中に設置してあります。在来線の忘れ物センターとは、場所が全く異なりますので注意が必要です。
博多駅の会社境界線まとめ
以上が「博多駅の会社境界線」に関するお話でした。内容を以下にまとめます。
複数の事業者が管理する駅
乗り入れる路線が多い都市部の駅や、新幹線駅においては、複数の鉄道事業者が同じ駅名の駅を管轄していることは珍しくない。
「筑紫口」と「博多口」
- 筑紫口側:JR西日本の管轄
- 博多口側:JR九州の管轄
会社境界線
東西自由通路の途中に会社境界線があり、そこを境に雰囲気が全く違う。
JR西日本側
- 濃いグレーが基調の落ち着いた雰囲気。
- コーポレートカラーの青が随所に使用されている。
- 新幹線のピクトグラムは700系レールスター。
JR九州側
- 白が基調の明るいカジュアルな印象。
- 新幹線のピクトグラムはN700S系。
注意点
ネット予約のきっぷ発行
一部の割引きっぷなどは、予約した事業者の券売機でなければ受け取れないことがある。
忘れ物の問合せ
- 在来線で忘れ物をした場合、1階のみどりの窓口内にある、JR九州の忘れ物預かり所。
- 新幹線で忘れ物をした場合、2階のひかり広場改札口付近にある、JR西日本の忘れ物センター。
複数の鉄道事業者が運営する駅は、日本全国数多く存在しますが、ここまで会社境界線の境目がハッキリわかる駅も少ないかなと思い、今回記事にさせていただきました。普段博多駅を使用されている方も、境界みたいなのがあるという認識はあっても、足元にJRマークが描かれた境界プレートが埋め込んであることまでご存知の方は少ないのではないでしょうか。利用する側からすれば、事業者の違いを意識するなんてことはありませんが、きっぷの受け取りや忘れ物関連に関しては、直接関係してくることなのでその点は注意して下さいね。
次回、もし博多駅を利用される機会があれば、是非、会社境界線上のプレートを探してみて下さい。見つけた時は少し嬉しくなりますよ(笑) ただし、人通りの多い箇所ですので、周りの通行人に支障しないよう気をつけましょう。
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