普段駅を利用していると、様々な駅設備を見る事ができます。自動券売機から始まり自動改札機、駅名標や発車標などはその代表例ですね。これらは鉄道を利用する側のために設けられた設備です。
一方で駅には駅係員や乗務員が利用するために設けられた設備もあります。その中でも今回は、出発信号機の信号現示を表示する役割がある「出発反応標識」という設備をテーマにお話したいと思います。
ちなみに、出発信号機については、以前こちらの記事でも紹介しているので、まだ読まれていない方は是非チェックしてみて下さい!
出発反応標識とは
冒頭申し上げましたが「出発反応標識」とは、出発信号機の信号現示を表示する役割を持った表示灯です。たいていは、ホームの天井から吊り下げられた状態で設置されていますが、中には自立した柱に取り付けられている例もあります。
設置の目的
列車が発車する3つの条件
ワンマン列車を除き、列車のドアを閉める役割は車掌が担っています。列車が発車しても良い条件は、以下の3つが挙げられます。
- 発車時刻となっていること
- 出発信号機が進行を指示する信号を現示していること。すなわち、赤信号ではないこと。
- ドアが閉まっていること。
「出発反応標識」が無いとどうなるか?
発車時刻となり、車掌がドアを閉めようとした時、もしホームがカーブしていたり、柱などの障害物が邪魔していたりして出発信号機が見えなかったらどうでしょうか?車掌は出発信号機が「赤信号」なのか、そうでないのかわからないままドアを閉めることになってしまいます。運転士はドアは閉まったものの、出発信号機が「赤信号」なので発車することができません。列車はドアが閉まったまま、ホームで待機することになります。お客さんからしたら、「はよ出発してくれー!」ってなりますよね。ホームのお客さんも「乗れるんなら乗せてくれや!」と思うはずです。
出発信号機の中継役
そこで、出発信号機の現示を「中継」する目的で設置してあるのが、この「出発反応標識」です。出発反応標識が点灯していれば、出発信号機は「赤信号ではない」ことがわかるので、車掌は安心してドアを閉めることができます。一方、もし消灯していたら、出発信号機は「赤信号」だとわかりますので、ドアを閉めずに待機することができます。出発反応標識は「車掌の出発信号機」ともいえる設備なのです。
様々な呼び名と喚呼方
この出発反応標識は「レピーター」とも呼ばれます。横文字になっただけで、なんかカッコいいですね。JR東日本の係員は「レピーター点灯!」と喚呼しています。西武鉄道は「反応進行」、JR西日本は「信号よし」と喚呼します。同じ出発反応標識ですが、事業者によって呼び方や喚呼方が違うのです。こういうの、鉄道好きにはたまらない要素ですね。他の事業者さんは何て喚呼しているんだろう、なんて興味が湧いてきます。
運転士も活用
視界不良時の頼みの綱
出発反応標識は主に車掌が確認する表示灯であるとお話しましたが、実は運転士が確認する場合もあります。例えば、もの凄い雨が降っていたり、濃霧で視界が非常に悪い場合を想像してみて下さい。運転士は出発信号機を確認することができず、列車を発車させることができません。この場合、駅ホームの出発反応標識を確認し、もし点灯していれば運転を開始してもよいというきまりになっています。
速度に要注意!
実際には、ここまで視界不良の場合には、通常速度で運転することがほぼ不可能です。なので、運転見合わせとなるか、または速度を落として徐行運転する場合がほとんどです。
また、出発反応標識は、「進行信号(=青色)」なのか、「注意信号(=黄色)」なのかまではわかりません。あくまで赤信号ではないということを係員に伝えるのみです。そのため、出発反応標識を確認して発車した場合は、一番低い制限速度の信号現示が現示されていることを予期して運転しなければなりません。
そっくりさん!?「非常報知灯」
さて、出発反応標識とは駅ホームの天井からぶら下がっている「丸い形をした表示灯」とご紹介したのですが、実は見た目そっくりな「なんちゃって出発反応標識」が存在します。写真のような設備なのですが、そっくりではないですか?ややこしいな〜と思うのですが、見分け方としては、周りに赤の斜線が引いてあるかどうかです。
この表示灯は「非常報知灯」というもので、ホーム上の非常ボタンが押された時に赤色に点滅する装置です。この点滅を確認した乗務員は、ただちに列車を停止させます。
新幹線には「出発進路開通表示灯」
新幹線に出発信号機?
この出発反応標識ですが、在来線に限らず新幹線にもついています。と、ここで「あれ?新幹線って出発信号機なんてあったっけ…?」と疑問を持たれた方、さすがです!新幹線はATCという在来線(※)とは違う保安装置で運行されており、出発信号機は存在しません。
※山手線や関東大手私鉄の一部においては、ATCが使用されています。
出発進路の「開通」を伝える
では、何を表示するのかというと「出発進路」という列車を停車場から出発させるための進路が開通、すなわち時刻やポイントの方向などの条件が整い、発車しても差し支えない状態となった時に点灯します。出発進路の開通状態を表示する表示灯なので「出発進路開通表示灯」といいます。名称は違いますが、役割は同じです。
※写真の「×」が点灯しているのは「通過表示灯」という、通過列車を退避している時に点灯する表示灯で、出発進路開通表示灯ではありません。出発進路開通表示灯は、その右に設置されています。当然、通過列車待ちの時は消灯しています。
様々な喚呼方
出発反応標識と同様、やはり事業者が違えば喚呼方も異なります。
JR東海の新大阪駅では、点灯した際「上り出発よし」「下り出発よし」と喚呼します。
対するJR西日本の小倉駅や博多駅では「上り開通よし」「下り開通よし」と喚呼しています。どちらも出発進路開通表示灯が点灯した際に、その点灯を確認する目的で喚呼されるので意味は全く同じです。会社が変われば喚呼も変わる、面白いですね!
出発反応標識まとめ
今回は、駅のホームに設置されている係員用の設備「出発反応標識」についてお話いたしました。以下に内容をまとめます。
- 出発信号機の信号現示を表示する役割を持った表示灯。
- 出発信号機の現示を「中継」し、車掌に伝えるのが目的。
- 「レピーター」とも呼ばれ、鉄道事業者によって喚呼方が異なる。
- 視界不良の時は運転士が確認することもある。
- 「非常報知灯」は赤い斜線が引かれた、見た目そっくりな表示灯。
- 新幹線には「出発進路開通表示灯」という、同じ役割を持った装置がある。
駅には今回に紹介したもの以外にもたくさんの設備があります。もし今度、列車を利用する機会があれば是非探してみて下さい。色々な発見があって面白いと思います。ちなみに今回ご紹介した出発反応標識ですが、点灯していたら出発信号機は赤信号以外の信号ですから、まもなく列車が出発することがわかります。もし、ホームにいる時についているのがわかったら、駆け込み乗車にならない程度に速やかに乗車しましょう!係員用の設備ですが、利用するお客さん側としても、こんな活用方法があります。
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