今回のテーマは「新幹線の車両形式」についてです。
新幹線の形式名とは?
新幹線には500系ですとか、N700系といった形式があるのは、皆さんもご存知だと思います。新幹線に限らず、日本の鉄道車両には◯◯系とか◯◯形といった形式名がつけられていて、実に多様な車両が運転されています。鉄道趣味の醍醐味ですね。
さて、ではこの形式名、どのように付けられているのでしょうか?今回は新幹線に的を絞ってお話していきます。
新幹線の形式名は500系とか700系とか、百の位の形式名で呼ばれていますね。そしてさらに、車両一つひとつに目を向けて見ますと、車体の側面に「775-5004」というふうに番号がふられています。これ、実は新幹線でいう「名札」のようなもので、この車両に付けられた専用のもの。同じ番号は他に存在しません。そして、この番号は一定の決まりを持っており、車両の構造や用途がわかるようになっています。
最初の3桁は「呼称および形式」を表しており、その形式の基本タイプや用途・構造を表します。
一桁目:基本タイプ
- なし:0系新幹線
- 1:100系新幹線
- 3:300系新幹線
- 5:500系新幹線
- 7:700系・N700系・N700S系新幹線
- 9:事業用
※山陽新幹線の形式のみを抜粋。
二桁目:用途
- 1・7:グリーン席の座席車
- 2・8:普通席の座席車
- 3:食堂車
- 4:二階建てグリーン席の座席車
- 6:グリーン席と普通席が一緒になった座席車
※N700S系は、3がグリーン席の座席車、4が普通車の座席車です。
三桁目:構造
- 1・2:運転席とモーターが両方とも付いている車両
- 3・4:運転席は付いているが、モーターは付いていない車両
- 5〜9:中間車両
三桁の後ろについている数字は?N700系の例
後ろについている最大で4桁の数字。これは同じ形式のうち、何番目に作られたかを表すのですが、性能が違う場合や改造した場合、また保有する会社によって番号が違います。現在、山陽新幹線で最も多く活躍しているN700系を例にあげると、以下のようになります。
0番代
JR東海所属の元祖N700系(今はもうありません)。
1000番代
JR東海所属のN700A系。
2000番代
JR東海所属の0番代を、N700A系に採用されている機能の一部を反映する為に改造されたグループ。
3000番代
JR西日本所属の元祖N 700系(今はもうありません)。
4000番代
JR西日本所属のN700A系。
5000番代
JR西日本所属の3000番代を、N700A系に採用されている機能の一部を反映する為に改造されたグループ。
7000番代
JR西日本所属の8両編成。
8000番代
JR九州所属の8両編成。
仲間が増え過ぎて大変な事になっていますね(笑) ただ、これがわかると車両番号を見ただけで、その車両の用途・構造や所属会社までわかってしまうので、知っておくと面白いですよ。
一番最初に例に挙げた、表題の車両の番号「775-5004」を上の条件に当てはめてみますと、N700系のグリーン席の座席車で中間車両。JR西日本所属車で、かつN700A系に改造されおり、4番目に製造された車両ということになります。
形式名が足りない!?苦し紛れの700系ファミリー
北へ向かう新幹線と西へ向かう新幹線
日本の新幹線は大きく分けて、東京から西に向かうJR東海・西日本の系統と、北に向かうJR東日本の系統の2つがあります。さきほど、山陽新幹線の形式名を紹介しましたが、一桁目が0系を除いて全て奇数である事に気がつくと思います。これは西に向かう系統は奇数、北に向かう系統は偶数と定められているからです。
数字を使い果たした西へ向かう新幹線
さて、となると新幹線の形式名は一つの系統に何種類設ける事ができるのでしょうか?西に向かうグループは奇数しか使えないので、1・3・5・7と0系を足したわずか5種類です。9は事業用で使えません。ドクターイエローが使用しています。そして、すでに700系が最後の貴重な貴重な数字「7」を使ってしまっているのです。車両形式名、詰んでしまいました…。
その後、開発された車両がどんな形式名で世に送り出されているのかは皆さんがご存知の通りです。N700系、そしてN700S系ですね。「7」から前に進めません。もう、残された数字がないのです。N700S系は、苦し紛れに二桁目の車両の用途の意味を変えて、何とか700番代でやりくりしています。
いずれN700S系の次世代車両が登場する日が来ます。西に向かう系統の新幹線はおおむね7年おきに新型車両がデビューしますから、N700S系が登場した2020年の7年後、2027年頃には次の車種が誕生しているかもしれません。その時、どんな形式名の新幹線が出てくるでしょうか?N700X系?それとも4桁を認めて1000系?はたまたS0系なんてのもアリでしょうか?次世代車両の形式に想いを馳せるのも楽しいですね。
先見の明あり!JR東日本の形式名の奇策!
JR東日本独特の形式名「E」
車両の形式名が枯渇する事に早くから気づき、対策を立てていたのがJR東日本です。JR東日本は200系、400系と続き、さらに600系とするところ、東日本の「East」の頭文字を冠して「E1系」と新しいルールのもとで形式名を付けていく事にしました。これで、新幹線に関して言えば1〜8の8形式分を捻出する事ができたのです。さすが、先見の明がありますね。
JR東日本は新幹線だけでなく、在来線にも1993年にデビューしたE351系特急形車両を皮切りに、車両形式名の頭に「E」をつけるようになりました。これで一件落着、新幹線も在来線も安心して順番に番号を振っていけますね。
数字を使い果たした北へ向かう新幹線
ところが先日、ある新幹線がデビューしてしまいました。山形新幹線用の新型車両「E8系」です。JR東日本は東北・北海道、秋田、山形、上越・北陸と多くの路線を持ち、専用の車両を開発してきたので、物凄い勢いで車両形式名を使ってきました。E1系のデビューからE8系のデビューまでの30年間で、8つの形式名を全て使い切ってしまったのです。
さて、次はどういう形式名となるでしょうか?こちらも「9」は事業用なので使用する事ができません。なので、4桁を許して「E10系」にするのか、西の系統のように「E8S系」にするのか、はたまた数字を戻して「新E1系」とするのか。こちらも、次世代車両の形式名が何になるのか、とても楽しみな状況です。
鉄道趣味の醍醐味「車両形式名」
皆さんが普段聞いているN700系とか500系といった形式名には、あらかじめ定められたルールに従って付けられていること。またそのルールがわかると、車両一つひとつの構造や用途などがわかる事。そして、その形式名が今まさに枯渇してしまっている事がご理解いただけたと思います。今度、新幹線に乗る機会があれば、是非車両側面に記載されている番号を確認してみて下さい。きっと新たな発見があって楽しめると思います。様々な車両の形式があるのは鉄道趣味の醍醐味です。一緒に楽しんでいきましょう!
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