JR東日本・JR西日本が車両装置・部品共通化の検討開始!

鉄道ニュース

 2024年7月5日、JR東日本とJR西日本は両社で使用する車両の装置や部品を共通化する検討を開始すると発表しました。東西で営業エリアが異なる両社が提携すると聞いて、ピンとこなかった方も多いのではないでしょうか?この両社が車両部品や装置を共通化することによって、どんなメリットがあるのでしょうか?また、これまでも鉄道事業者同士で車両部品や装置、設計を共有した例はあるのでしょうか?

 今回のテーマは「車両部品・装置の共通化」です。まずは、ニュースリリースの内容から詳しく見て行きましょう!

共通化の背景

 現在、日本の人口は減少傾向にあり、今後もその流れはおそらく変わらないでしょう。特に労働人口の増減は鉄道事業の収益に直結します。たとえ、東京や大阪のような大都市を営業エリアに持っていたとしても、従来のやり方を続けていては安定的な成長は見込めなくなるかもしれません。

 また、最近は物価高が続き、これまでの価格では手に入らないものも出てきています。そんな労働人口減少・物価高の時代において「一つの事業者だけではなく、複数社と連携して乗り越えていきましょう」というのが今回の提携の背景にあります。

共通化の目的

 JR東日本とJR西日本で使用する部品や装置を共通化する事により、調達を簡単にしたり、生産性の向上を図り、必要な人員やコストを抑えていくことが目的です。労働人口が減少する時代において、人員やコストを最適化していくことは、持続的で安定的な輸送サービスを提供する上で非常に重要な要素ですね。

今後の流れ

共通化しやすい部品

 今後、まずモーターや行先表示器、オイルダンパーやパンタグラフなどの車両部品の共通化を検討していくとしています。これらの部品や装置は、共通化しても差し支えないものも多いのかもしれません。確かに行先表示器などは、特段事業者のこだわりがなければ、仕様を統一しても問題ないような気がしますよね。

共通化しにくい部品

 一方で、各社それぞれの環境に適した仕様で製造されてきた独自のものは、すぐに共通化することはできません。例えば、車体の大きさやドアの枚数、前面形状(貫通扉の有無など)はそれに該当します。そのまま独自のものを採用し続けた方が最適なのか、共通化しても差し支えないものなのかは、今後検討しながら進めていくとしています。

 実際、ドアの枚数を例に挙げると、首都圏で使用されているJR東日本のE231系やE233系、E235系は片側4枚ドア。対するJR西日本の大阪環状線323系や新快速で使用されている223系、225系は片側3枚ドアです。既にそれを前提にホームドアが設置されている駅もあるので、ここを今からすぐに統一するのは難しいかもしれません。

将来的には共通化車両の展開へ

出典:JR東日本ニュースリリース JR東日本とJR西日本が車両の装置・部品共通化の検討を開始

 両社は今回の共通化の取り組みを土台とし、他の鉄道事業者や車両メーカー、サプライヤーなどとの意見交換を行い、共通化部品調達の仕組みを作り、将来的には共通化車両の展開を目指していくとしています。

JR東日本の車両設計をベースとした私鉄各社

車両共通化の他の事例

 さて、今回はJR東日本とJR西日本という、営業エリアが全く違う鉄道事業者同士がタッグを組むということで、やや大きなニュースとなりましたが、このように他社の車両部品や装置、車両の設計を参考にすることにより、コストの削減を狙った取り組みというのはこれまで他にもなかったのでしょうか?実は、首都圏においてはJR東日本の車両設計を流用して、私鉄各社が新型車両を製造するという例がありました。

JR東日本車両をベースにした私鉄車両

 首都圏にお住まいの方は感じていたかもしれませんが、私鉄の新型車両は、どれも何だか似たり寄ったりの作りをしているなぁ…と思ったことはないでしょうか?最近は各社オリジナリティのある新型車両に回帰しつつありますが、一時期JR東日本のE231系、またE233系をベースに作られた私鉄車両が多く登場していました。以下がその例です。

JR東日本 E231系ベース

  • 東急電鉄5000系
  • 横浜高速鉄道Y500系
  • 相模鉄道10000系
  • 東京都交通局10-300系

JR東日本 E233系ベース

  • 相模鉄道11000系
  • 小田急電鉄4000系
  • 東京都交通局10-300系(後期型)

以前は個性的だった相模鉄道

 車両設計を共通化することにより、設計費、部品調達費など、新型車両の開発に係るコストを大きく削減することができます。このメリットに目をつけ、JR東日本の車両に似た私鉄車両が多く登場しました。

 特に、相模鉄道の10000系に関しては、乗ったらJRの車両に乗っていたかと勘違いするくらい、ほぼ同一仕様で導入されています。床下から響くモーター音も、ドアの開閉チャイムも、車内のインテリアもほぼ一緒です。

 同社はもともと、客室内はパワーウインドウの窓や鏡が設置されていたり、走行装置では直角カルダン駆動方式や車輪の外側に配置されたディスクブレーキなど、他社にはない独特な車両が多かったのですが、この10000系車両を境に首都圏でよく見る標準的な車両となりました。当時は少し残念でしたが、その後他社との直通運転を機に、最近はまた個性的な車両に回帰してきています。

車両部品・装置共通化まとめ

 以上が、「車両部品・装置共通化」に関するお話でした。内容を以下にまとめます。

共通化の背景

労働人口減少・物価高により、従来のやり方では輸送サービスを維持できない。

共通化の目的

部品調達を簡単にしたり、生産性の向上を図り、必要な人員やコストを抑える。

今後の流れ

共通化しやすい部品から検討

  • モーター
  • パンタグラフ
  • オイルダンパー
  • 行先表示器

共通化のハードルが高い項目は今後の検討課題

  • 車体寸法
  • ドアの枚数
  • 前面形状

最終的には、共通化車両の展開を目指す。

JR東日本車両ベースの私鉄車両

東急、小田急、相鉄、都交、横浜高速などで採用。特に、相鉄10000系は、ベースとなるE231系との共通箇所が多い。

 鉄道趣味的な目線で見れば、各事業で個性がある方が見応えがあり、楽しいのですが、新型車両の開発には莫大なお金がかかります。少子高齢化、人口減少、物価高と鉄道事業者にとって環境は苦しくなるばかりです。個性は残しつつ、コストを削減し、輸送サービスを維持し続けるための取り組みが各事業者には求められています。

 今回、共通化の検討を始めたというニュースを取り上げましたが、それを踏まえてどんな車両が登場するのか。これからとても楽しみです。

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