直流モーター最後の制御方式!「界磁添加励磁制御法」

鉄道の仕組み

 今回のテーマは、いよいよ直流モーター最後の制御方式「界磁添加励磁制御法」です。抵抗・直並列・弱め界磁制御は電気の無駄が多く、チョッパ制御は省エネルギーですが高価でなかなか手がでませんでした。

※これらの制御方式の詳細は過去のブログで紹介しています。まだ読んでいない方はこちらも是非ご覧下さい。

ピアノを奏でて電気ストーブを操る!?「抵抗制御法」

逆起電力と戦え!「直並列・弱め界磁制御法」

電流のせん切り名人!?エコだが高価な「チョッパ制御法」

 省エネルギーでかつチョッパ制御よりも安価な制御方式はないものか…という事で登場したのが、この制御方式です。はたして、直流モーター制御の救世主となりうるでしょうか?

抵抗制御法と同じ!?

 チョッパ制御方式の中でも「電機子チョッパ制御」は、モーターに供給する電流の全てをチョッパ制御するという、これまでにない全く新しい制御方式でした。ところが、今回登場するこの界磁添加励磁制御は、抵抗制御法と直並列制御法は従来通り使用します。置き換えたのはこの後の弱め界磁制御法で、これは「界磁チョッパ制御」と同様です。すなわち、全体の機構としてはやや後退したような印象なのです。

「励磁装置」を用いて界磁を弱める!

 弱め界磁制御法と同様、界磁コイルの手前に誘導分路が設けられており、徐々に界磁に流れる電流を弱めていくのも変わりません。ただし、この弱めていく方法に違いがあります。弱め界磁制御法は誘導分路に「界磁分流抵抗器」という抵抗器を組み込み、誘導分路に流れる電流を調整していました。

 一方、界磁添加励磁制御法では、モーターの界磁コイルの先にサイリスタを用いた装置「励磁装置」というものが設置してあります。界磁を弱める段階に入った時、この励磁装置は電機子コイルからの電流と逆向きの電流を誘導分路に流し込みます。始めは大きな電流を流し込み、誘導分路に電流を流れにくくしておきます。すなわち、全界磁の状態です。そして、その逆向き電流を徐々に弱めていく事によって、誘導分路に流れる電機子コイルからの電流が増えていき、界磁を弱めていきます。これが界磁添加励磁制御法です。

界磁添加励磁制御の強みとは!?

電機子チョッパ制御より安い

 では、この制御方式の強みは何でしょうか。まず、第一にチョッパ制御法の一つ「電機子チョッパ制御」よりも安価であるということ。励磁装置をおけば良いだけなので、大規模な半導体装置を必要としません。

普通のモーターでよい

 二つ目のメリットは、従来のモーターを使用できるということ。チョッパ制御法の一つ「界磁チョッパ制御」では、電機子チョッパよりお手軽だけど「直流複巻電動機」という特殊なモーターが必要でした。このモーターは手入れが大変なのですが、界磁添加励磁制御法にこのモーターは不用です。

界磁を弱めるのに電気を捨てない

 三つ目のメリットは、電気を捨てなくてよいということ。弱め界磁制御法では、界磁分流抵抗器から電気エネルギーを熱として捨てていました。添加励磁制御法では、電機子に流れる電流と逆向きの電流を調整するだけなので、捨ててしまう無駄な電気が発生しません。ただし、界磁を弱める手前の段階においては、抵抗制御法を使用しているので、ここでは残念ながら無駄が発生しています。

回生ブレーキが使える

 最後、四つ目のメリットは「回生ブレーキ」が使用できるという事です。回生ブレーキとは電気ブレーキの一種で、モーターを発電機として利用し、ブレーキ力を得る方法です。これまで弱め界磁制御法を採用していた車両では、発生していた電気は熱として捨てていました。一方、この制御方式では発生する電圧を架線電圧よりも高くする事ができるので、架線に電気を戻す事ができます。その為、近くを走行する他の列車に、いらなくなった電気をリサイクルする事ができるのです。とっても経済的ですね!

紆余曲折を経て…

 弱め界磁制御は電気の無駄が大きい、電機子チョッパ制御は値段が高すぎて見合わない、界磁チョッパ制御はお手軽で回生ブレーキも使えるけど、特殊なモーターが必要で手入れが大変…と色々な制御方式が開発されてきましたが、どれも欠点がありました。界磁添加励磁制御法は、そこそこの省エネルギー、そこそこの値段、特殊なモーターがいらない、という事でちょうど良い落とし所だったのかもしれません。直流モーターの制御方式は最終的にこの制御法にゴールしました。バランスを考えての結果ですね。

交流モーターの登場

 さて、ではこの後どのように進化していくかですが、皆さまがよく耳にするであろう制御方式「VVVFインバーター制御法」がいよいよ登場します。この制御方式には、新たに「交流モーター」が採用されています。これにて、長きにわたり使用されてきた直流モーターは卒業です…寂しいですね、お世話になりました。

 次回は、現在主流となっているVVVFインバーター制御法についてお話します。

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