どこに停車する!?乗務員の超重要目印「停止位置目標」とは?

鉄道雑学

 今回のテーマは「列車の停止位置」についてです。

運転士は何を目印に列車を停めているのか?

 普段当たり前のように、定位置に停車する列車ですが、皆さんは運転士が何を目印に停止しているか知っていますか?結論から申し上げますと、運転士は駅に設置されている「停止位置目標」略して「停目」という、菱形の黒枠の中に数字が記されている標識を目印に停止しています。数字は列車の両数を表しています。普段列車を利用する側としてはあまり意識する事がないものですが、一度はどこかで見た事があるのではないでしょうか?先頭車両が停まる位置なので、ホームの端にある事が多く目立ちませんが、列車は人の手で止めているわけですから、どこの駅にもたいてい設置してあります。

 さて、ここで問題!この停止位置目標、在来線の場合どこに合わせるのが正解でしょうか!?

  1. 運転士の目線の真横
  2. 先頭車両の連結器
  3. 乗務員室の扉

正解は…

 

 

2番です!感覚としては1番のような気もするんですが、実は2番なんですね。先頭車両の連結器が停止位置目標の標識とピッタリ揃った所が正しい停止位置です。

両数イコール停止位置目標ではない?

自分の列車の停止位置目標が見つからないときは…

 列車は様々な両数で運転されますが、停止位置目標はその全ての両数に対応していない事があります。例えば3両編成の列車を運転しているとします。次の停車駅に停まろうとした際、ホームの停目を確認したら2、そしてその次の停目がなんと4でした。「3」がありません。3両編成の列車の運転士、この駅で自分が運転する列車の停止位置目標が見つかりません、困った!

 さて、ここで再度問題です。この場合、3両編成の運転士はどこに停めるのが正解でしょうか?

  1. 4両停目から1両分「感覚」で手前に停車する。
  2. 3の数字の手前の両数、2に合わせて停車する。
  3. 3の数字の次の両数、4に合わせて停車する。

正解は…

 

 

3番です!3の数字の次の両数、4に合わせて停車するのが正しいです。もし運転している両数とピッタリの停止位置目標がない場合は、一番近い大きい方の数の停止位置目標に合わせます。この例では4ですが、例えば7とか8とか、たとえ離れた数字であっても次の数字がそれしかないのであれば、そこに列車を停止させます。

各駅全集中の運転士

 同じ線区の駅でも、停止位置目標はバラバラです。これは階段や改札口に近い所に列車を停めて、利用者が長い距離を歩かなくてもよいようにするための配慮からです。利用者は便利ですが、運転士は停止位置目標が各駅バラバラなので、勘違いを起こさないように神経を尖らせながら各駅、全集中で列車を停めているのです。運転士もプロです。停めて当たり前なのですが、当然のように正しい位置に時間通りに各駅ピタリと停める、実は凄いことなんです。心の中で「ありがとう」とねぎらってあげましょう。

ドア開けないで!安全を守る最後の砦!車掌用停止位置目標とは?

運転士が停止位置を誤ったら…

 運転士も人間である以上、ヒューマンエラーは起こり得ます。ないにこしたことはないのですが、停止位置を勘違いしたりミスしたりする事は全くの0ではありません。もし、停止位置を行き過ぎ、列車の一部がホームから外れてしまったら…。そして、もしその状態で車掌がドアが開けてしまったら…。もしその時、ドアに寄りかかっているお客さんがいたら…考えただけでも恐ろしいですよね。列車から転落してケガをしてしまいます。

車掌用停止位置目標

 ここまで読んで下さった皆さまは「停止位置目標は運転士のもの」というイメージがあると思うのですが、実は停止位置目標は運転士用だけではなく「車掌用」のものもあるのです。それは、今申し上げた停止位置のミスが発生した時、車掌が正しい停止位置に停まっていないと判別し、ドアを開けないようにするためです。車掌は駅に停車後、自分が担当している列車の両数と車掌用停止位置目標が合っている事を確実に確認し、ドアを開けます。「6両ヨシ」とか「4両停止位置、ヨシ」とか、事業者によって喚呼は異なりますが、停止位置の確認は事業者を問わず、また在来線、新幹線を問わず必ず行われています。今度列車に乗った時は、車掌さんの動きにも、ぜひ注目してみて下さいね。車掌用の停止位置目標は2両編成のような短編成用は省略されている事がありますが、ピッタリの両数停目がほぼ用意されていて、これは運転士用のものとは違うところです。

山陽新幹線の車掌用中間停止位置目標とは?

16両編成の新幹線

 山陽新幹線に乗られた事のある方はご存知かもしれませんが、16両編成の「のぞみ号」や「ひかり号」には車掌が2人おり、中間車両の8号車と、一番後ろの車両に乗務しています。ドアを開ける役割の車掌は必ず一番後ろです。その為、16両編成の車掌用停止位置目標は、一番後ろの車両の乗務員室用一箇所のみです。

8両編成の新幹線

 一方、8両編成の「さくら号」や「こだま号」などの短い列車では、車掌は1人のみです。始発駅と終着駅、他の乗務員との乗り継ぎ駅では16両編成と同様で一番後ろ、それ以外の中間駅では6号車の乗務員室にてドアの開け閉めが行われています。その為、駅の停止位置目標は乗り継ぎする時のために一番後ろに停止位置目標を設置するとともに、乗り継ぎしない時のために6号車の乗務員室用にも停止位置目標を設置しています。車掌は、自分が乗っている車両形式と、乗車している位置が最後部車両なのか中間車両なのかを事前に確かめた上で、停止位置が正しいかどうかを判断し、ドアを開けています。8両編成の車掌は、中間車両と最後部車両、そして車両形式によって確認すべき停止位置目標がバラバラなので、特に注意しなければなりません。

運転士と車掌の努力

 当たり前のように停車し、発車していく列車ですが、その当たり前の風景は運転士と車掌が停止位置目標が正しいかどうかを、各駅各駅、細心の注意を払いながら確認している努力の賜物です。何気なく利用していると、なかなか気がつきませんが、そんな事を考えながら列車に乗ると、普段とは違った風景に見えるかもしれません。

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