進化する道床!目指せメンテナンスフリー!

鉄道の仕組み

 「線路をイメージしてください!」と言われたら、あなたはどのような線路を思い浮かべますか?たいていの方は、砂利の上にまくらぎが並べてあり、その上をレールが通してある線路を思い浮かべると思います。まくらぎを支えている部分を「道床」といい、砂利が敷いてある道床は「バラスト軌道」といいます。在来線を中心に採用されているものなのですが、実はこれ以外にも様々な種類の道床があります。今回のテーマは線路を支える縁の下の力持ち「道床」です。それでは、詳しく見ていきましょう!

道床とは何か

 道床とは、まくらぎと路盤に挟まれた層、ならびにまくらぎの周囲に敷き詰められた砕石により構成された軌道構造の部分をいいます。なお、この道床とレール、まくらぎの3つを合わせて「軌道」といい、軌道とそれを支える路盤を合わせて「線路」といいます。

道床の役割

 道床の役割は、以下の6つです。

  1. まくらぎに伝わってくる列車の重さを路盤に均等に分散させ、路盤の破壊を防ぐ。
  2. まくらぎの前後方向、左右方向の移動を防ぐ。
  3. 軌道に弾力性を与え、列車の振動を減退させる。
  4. 列車の横圧及びレール温度上昇に伴う張出しに抵抗する。
  5. 突き固めなどの保線作業を容易にする。
  6. 軌道の排水を良好にし、雑草の発生を防ぐ。

道床の分類

 道床は大きく分けると、以下の3種類があります。

有道床軌道

  • バラスト軌道
  • 舗装軌道
  • てん充道床軌道

コンクリート道床軌道

  • スラブ軌道
  • 弾性まくらぎ直結軌道

無道床軌道

  • 橋まくらぎ軌道
  • 鋼直結軌道

 無道床軌道とは、橋梁においてまくらぎを直接鋼桁に固定する方法で、道床の種類といいながら今回の主役である道床が省略されてしまっているので、詳しい解説は割愛します。

 ここでは、有道床軌道の「バラスト軌道」、コンクリート道床軌道の「スラブ軌道」ならびに「弾性まくらぎ直結軌道」について、それぞれの長所と短所を見ながら解説していきます。

バラスト軌道

 バラスト軌道とは、バラストという砂利を路盤の上に敷き詰めた構造の軌道です。

長所

  • 列車の振動や騒音が小さい。
  • 軌道の整備が簡単。
  • 他の軌道と比較して安価。

短所

  • 線路がずれる現象「軌道狂い」が発生しやすい。
  • こまめな保守が必要。そのままにしておくと、列車荷重によりバラストが微粒子化して、弾力性が失われた状態「道床噴泥」になる。

 バラスト軌道は古くから使用され、安価に敷設できますが、保守に手間がかかるのが悩みの種です。そこで、保守作業の抜本的な解決を図るべく登場したのが、これから紹介するコンクリート道床軌道です。

スラブ軌道

 スラブ軌道とは、路盤の上に「スラブ」という長さ5m、幅2m、厚さ20cmのコンクリート製の板を設置し、その上にレールを敷く構造の軌道です。

長所

  • 耐久性が高い。
  • 軌道狂いが発生しにくい。
  • 軽量なため高架橋の建設費を削減できる。
  • 軌道の高さが減るため、トンネルの断面積を小さくすることができる。

欠点

  • 振動や騒音の吸収性に劣る。
  • 一旦軌道狂いが発生すると、保守に手間がかかる。

 スラブ軌道は保守性に優れ、バラスト軌道の欠点を克服しましたが、一方で騒音・振動が大きくなる欠点も持ち合わせています。実際、スラブ軌道が採用された新幹線駅で通過列車が来ると、バラスト軌道の駅と比べて明らかに大きな騒音と振動を感じます。周辺に住宅密集地がある場合は、対策が必要になる場面もあるでしょう。

【参考】枠型軌道スラブ

 枠型軌道スラブとは、スラブ軌道のうちスラブの真ん中をくり抜いたような形状をしているものです。通常のスラブよりも軽量であるほか、表面と内部の温度差が少ないので、反りを防止することができるなどのメリットがあります。九州新幹線などで採用されています。

弾性まくらぎ直結軌道

 弾性まくらぎ直結軌道とは、PCまくらぎの下部と側面を弾性のある被覆材で覆い、コンクリート道床に固定したものです。

長所

  • 軌道狂いが発生しにくい。
  • 騒音や振動が少ない。

短所

  • 建設費が高い。

 弾性まくらぎ直結軌道は、騒音や振動が少ないというメリットを活かし、都市部で新線が建設されたり、高架化などの大規模な改良工事が行われる際に採用されるケースが多いです。また、東北新幹線や上越新幹線においても一部で採用されています。

 バラスト軌道よりも保守性に優れ、スラブ軌道よりも騒音・振動に優れているという点においては、両者のいいとこ取りをしたような軌道です。

道床まとめ

 以上が「道床」に関するお話でした。内容を以下にまとめます。

道床とは何か

 まくらぎと路盤に挟まれた層、ならびにまくらぎの周囲に敷き詰められた砕石により構成された軌道構造の部分。

道床の役割

  1. 列車の重さを均等に分散させる。
  2. まくらぎの移動を防ぐ。
  3. 列車の振動を減退させる。
  4. 列車の横圧及びレール温度上昇に伴う張出しに抵抗する。
  5. 保線作業を容易にする。
  6. 軌道の排水を良好にする。

道床の分類

有道床軌道

  • バラスト軌道
  • 舗装軌道
  • てん充道床軌道

コンクリート道床軌道

  • スラブ軌道
  • 弾性まくらぎ直結軌道

無道床軌道

  • 橋まくらぎ軌道
  • 鋼直結軌道

バラスト軌道

 砂利を路盤の上に敷き詰めた構造の軌道。安価で振動・騒音低減に有利だが、保守に手間がかかる。

スラブ軌道

 路盤の上に「スラブ」というコンクリート製の板を設置し、その上にレールを敷く構造の軌道。保守性に優れ、高架橋やトンネル建設費を削減できるが、騒音・振動が大きい。枠型軌道スラブという、軽量化を図ったものもある。

弾性まくらぎ直結軌道

 PCまくらぎの下部と側面を弾性のある被覆材で覆い、コンクリート道床に固定したもの。建設費は高いものの、保守性に優れ、さらに振動・騒音が少ない。

 様々な道床をご紹介してきましたが、なんとこれらをいっぺんに見る事ができる路線があります。瀬戸大橋線の岡山〜児島駅間です。途中駅の大元駅付近が弾性まくらぎ直結軌道、茶屋町〜児島駅間がスラブ軌道、それ以外の区間はバラスト軌道と、3種類の道床が使用されています。

 大元駅は2001年に高架化、茶屋町〜児島駅間は1988年に新規開業した区間で、それぞれ当時の技術で建設されているため、このようなチグハグ線路になっています。時代とともに進歩する技術を車窓から見ることができて非常に興味深いですよ。もし、乗られる機会がありましたら、是非一度、景色ではなく線路に注目してみて下さい!(笑)

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